トランスジェンダーとは
出生時に割り当てられた性別と、自分の認識する性別が異なる人。定義はこれだけです。
定義に含まれないもの
この言葉は手術の有無を条件にしません。ホルモン療法をしているかどうかも、外見がどう見えるかも、誰を好きになるかも条件にしません。「自分の性別をどう認識しているか」だけが軸です。ここを厳しくすると、医療を受けられない事情のある人が定義から締め出されてしまうからです。
ニューハーフとの関係
「ニューハーフ」は日本の接客業で生まれた職業の言葉、「トランスジェンダー」は属性の言葉です。重なる人は多いものの、イコールではありません。ニューハーフとして働きながら自分を女性と規定しない人もいれば、トランス女性でこの職業語を強く拒む人もいます。呼び分けの実践はこちらで説明しています。
「性同一性障害」との違い
性同一性障害(GID)は医学の診断名です。世界的には「障害」という位置づけを見直し、「性別不合」という枠組みへ移行しています(詳細)。トランスジェンダーは自認の言葉、性同一性障害は診断の言葉——本人が診断を受けているかどうかを、周囲が詮索する話ではありません。
聞いてよいこと、悪いこと
| 聞いてよい | 呼び方(名前・代名詞)。「どうお呼びすれば?」の一言で足りる |
|---|---|
| 関係によっては | カミングアウトの範囲——誰まで知っているか。口外しないために必要な確認 |
| 踏み込まない | 手術・身体・戸籍・昔の名前。医療と法律の個人情報であり、好奇心で聞く話ではない |
「昔の名前は?」が一番よくある失礼です。過去の名前を尋ねることは、本人が離れた性別に引き戻すことと同じ意味を持ちます。
「移行」には3つの層がある
トランスジェンダーの人が自分の性別で生きようとするとき、変えていくものは1つではありません。3層に分けて考えると、報道や制度の話が読みやすくなります。
| 社会的移行 | 名前・服装・呼ばれ方・職場での扱い。医療を伴わない。多くの人がここから始める |
|---|---|
| 医療的移行 | ホルモン療法・手術。するかどうか、どこまでするかは人による。しない人も大勢いる |
| 法的移行 | 戸籍の性別変更。日本では特例法の要件を満たす必要がある |
この3層は順番も有無も人それぞれです。「手術していないなら本物ではない」という発想は、医療的移行だけを本物の条件にする誤りで、経済的・健康上の理由で医療にアクセスできない人を締め出します。
法的性別変更と、2023年の転換点
日本で戸籍の性別を変えるには性同一性障害特例法の要件を満たす必要があり、長らく「生殖能力をなくすこと」が条件に含まれていました。事実上の手術強制です。2023年10月、最高裁はこの生殖能力要件を違憲と判断しました。手術をしなければ自分の性別で法的に生きられない、という状態が憲法違反とされた——戦後の家族法の中でも大きな判断です。
ただし外観に関する要件は残っており、制度は現在も過渡期にあります。手続きの実際はlgbtq.tokyoの領分なので、当サイトでは言葉の整理までにとどめます。
定義をめぐる論争への、当サイトの立場
「トランス女性は女性か」という問いが、しばしば激しい論争になります。当サイトはこの論争を裁定する立場を取りません。取るのは1つだけ——目の前の人をどう呼び、どう扱うかは、論争の決着を待たずに決められる、という立場です。呼び方を確認し、詮索をせず、本人の自認を尊重する。それは思想の表明ではなく、対人関係の基本動作です。